創作意欲のワンフレーズ

マリー・ミー！ ＊ ページ18

ふわり。
どこからともなく吹いたその春風は、私の足元を掠(かす)めると同時に、貴女の無垢なワンピースを舞い散る花弁のように揺らした。

――不意に、甘い香りが鼻腔をくすぐる。
ジャスミンの中に微かにホワイトピーチが香っているような、甘くて上品な匂いだ。

良い匂いするね、と言って、私は貴女の艶(あで)やかな髪をさらりと掬(すく)って口元に寄せる。
すると貴女は頬を薄紅色に染めて「新しいの買ったの。でもまだ内緒」と悪戯っぽく目を細めて笑った。


私はその香りに覚えがあった。
以前貴女が好みだと言っていた、恐らくLANVINの香水だ。

名前が思い出せない。けれど、それで良い。
貴女が内緒と言うのだから、私はこの子のかわいい隠し事に付き合ってあげよう。


私は解けた手を繋ぎ直して、貴女の鞄に指輪が入っているとも知らずに、手を引いて歩き出した。


……その拍子に、爽やかなビターオレンジが柔らかく香る。

ふと、ある香水の名前が思い浮かんだ。
さっきは丁度トップがミドルに切り替わる所で気が付かなかったが、この香水の名前は――。


「Marry me!」

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香水：ランバン/マリー・ミー！
花言葉
ジャスミン：愛らしさ、優美
ホワイトピーチ：純真
ビターオレンジ：花嫁の喜び、相思相愛、純潔、愛らしさ

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