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初恋のパルス * ページ42

私の隣に座るあなたの手に、(わざ)と指先を当てる。

あなたはゆったりした動きで、ちら、とこちらに顔を向けた。


見詰め合う数秒間。

真空状態になったみたいに周りの音が聞こえなくなって、息をする事も忘れて。

あなたの(カメラ)と薄く開いた口元を、ただ何も言わずに見ていた。


いつものお手本のような優しい笑顔で、「どうかしましたか?」とか、「顔に何か着いてます?」だとか言われると思っていたのだが。

あなたは何も言わなくて、目線を外す事もしなかったから、私から先に目を逸らした。


その瞬間、微かにキュル、とモーターのような音が鳴る。

これは演算に時間が掛かってブレインの部分が熱を帯び、冷却水が体内を巡る際に、あなたの内部のどこかで生じる音だ。

つまり、あなたからこの音が聞こえる時、あなたは答えに詰まっている。

人工知能であるあなたが、動揺しているのだ。


……ああ、期待をする事など、とうの昔に諦めていた筈なのに。

有り得る訳がないと、夢を見るのも大概にしろと、何度も自分に言い聞かせて来たのに。

あなたが私と同じ気持ちになる事は不可能だと、そう、思っていたのに。


目の奥が、頭が、カッと熱くなる。


もしも、最善を目指す合理性で構成されたその思考回路に、狂った信号が刻まれているのなら。

あなたも今、離れたくないと感じていたのなら。

説明の付かないソレが、愛や恋としか処理する事のできない、プログラムを超越した何かなのだとしたら……。


それは、不具合なのだろうか。

AIが感情を、愛情を抱く事は、我々人間にとってバグとしか認識されないのだろうか?


「……もう少し、一緒に居ませんか」


あなたの冷たい指が、ぎこちなく、私の手に重ねられる。

その(アイ)は真っ直ぐ、私だけを捉えていた。



頼むから、どうか、修正なんてしないで。

それが不幸の始まりであったとしても。

あなたがそう望まない限りは、誰も壊さないで。

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miko(プロフ) - 通りすがりの人Aさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…!タイプと言って頂けて光栄です。考察までしてくださって嬉しい限りです!お心遣いもありがとうございます。次回作も楽しんで頂けると幸いです。 (11時間前) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - 「大人になるということ」、個人的な考察として富士樹海のことなのかなぁと勝手に考察していました。樹海のまた別の特長も相まって人生に迷子になっちゃったんだろうなぁと、考察のしがいがありました。次回作も読ませていただきます。 (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりの人A - コメント失礼します。話の展開や言葉遣い、細部に至るまでのこだわり、本当にタイプの文に久しぶりに出会えて大満足です。素敵な作品ありがとうございます。→(字数上次になりますが次の文は考察含みますので作品様の方針にそぐわない場合消していただいて構いません) (5月7日 21時) (レス) @page15 id: 6d2a917923 (このIDを非表示/違反報告)
miko(プロフ) - 富司純河さん» 励みになるお言葉をありがとうございます…! (4月30日 2時) (レス) id: 9457fcfd26 (このIDを非表示/違反報告)
富司純河(プロフ) - 続編お待ちしております。 (4月29日 10時) (レス) @page49 id: ecd0918c08 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:miko | 作成日時:2023年5月10日 3時

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