蝶は鳥にはなれずとも 4 (ページ20)

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契約。ページ20

「…本物だな。」

龍園君から手渡されたキーカードの文字を見つめ、葛城君が呟く。

「良いだろう、契約成立だ。」

確信した。
詳細は不明にせよ、彼等は確実に何かしらの契約を交わしている。
そして、恐らくそれを持ちかけたのは龍園君だ。
葛城君がそのような博打的行為に及ぶとは考えらないし、坂柳さんというライバル関係の人間が居る以上、厄介なことは掛け持ちしない筈だからだ。
それにしても龍園君、流石だ。
この短期間で、Aクラスと約束を結んで戦略的な共闘関係を成立させるとは。
私達には無い思考回路で、興味が湧く。
髭を少し蓄えた龍園君が、ニヤリと笑いながら付け加えた。

「Bのリーダーも教えようか？Bは流石にガードが硬い、証拠の写真や現物はねぇが。」
「確実な証拠が無い限り、不要だ。」

そして、こちらもやはり葛城君らしい。
不用意に相手に借りを作る前に、自らその申し出を断った。
証拠が無ければ、葛城君は信用しない。
慎重で、いつでも先を読もうと頭を巡らせている。
この年齢の人間にしては、やや賢い方だろう。
葛城君は去り際、はっきりと龍園君を鼻で嗤った。

「龍園、貴様臭うぞ。シャワーでも浴びたらどうだ？」

うっかり吹き出しかけた。
自分とスパイのクラスメイト以外をリタイアさせ1人残った龍園君に、その言葉を浴びせるなんて。
葛城君って、もしかして意外に面白い男だったりする？
だとしたら、これからもっと絡みに行ってこようかな。

さてと。
3人が居なくなってから、きっと清隆もこっちにやってくる。
それまでに、鈴音さんを雨宿りさせてあげるとしよう。
このまま雨に打たれたままでは、既に引いている風邪が更に悪化する。
試験後に暫く利用出来ないんじゃ、勿体無いもの。
私は、人気が無くなってから木から飛び降り、びしょ濡れになって荒い息を繰り返す鈴音さんを横抱きにする。
体温も上がっている、熱が更に上がったようだ。
葉の陰に彼女を下ろし、同じように木の幹の根本に座って清隆を待つ。

鈴音さんが居なくなれば、うちのクラスはもっと操りやすくなる。
貴女は、船の中で静かに休んで頂戴。
後は、私達が上手くやっておくから。