第11話。 ページ8
男子の誰も下着を持っていなかったと聞かされても、女子達の不信感は募るばかりだった。
私は一応女子寄りの中立的な立場として、男子と女子の亀裂の間で論議の行く先を見守っている。
平田君が何とか口を挟もうとするも、互いの怒号で掻き消されてしまう。
「男子と女子で、エリアを分けてよ。男子のテントを移動させて、女子側には立入禁止にするの。」
「何だよそれ！」
「だったら、お前らがテント動かせよ！俺等はやらねぇからな！」
「アンタ達なんかに頼まない！！平田君は、手伝ってくれるよね…？」
「……分かった、僕がやろう。時間は、かかるかも知れないけれど。」
揉め事を起こせない平田君は、軽井沢さんの要求にすぐ応じた。
まぁ、こんな状態では断れないだろう。
間に割って入っても良いけれど、それは私の役目じゃない。
そろそろ出番なんじゃない？鈴音さん。
後ろで深いため息を吐いた鈴音さんの気配が動いたのを、肌で感じる。
「男女で、生活区間を分けるのは構わない。でも、テントの移動作業中には平田君は男女の両区画を移動出来るのよね？」
「…だから何？」
「彼1人だけでは、信用出来ないわ。」
鈴音さんの発言に、平田君を特別視する女子達は目を怒らせた。
「平田君は別でしょ！？」
いけないわね、平田君は聖人君子でそれ以外は変態ってこと？
貧相な発想ね、涙が出ちゃう。
またしても刺々しい雰囲気になりかけた空気を察したらしく、平田君がチラリと私を見た。
手を貸して、と言われているのが分かったので仕方が無しに口を挟む。
『平田君だって、男の子だよ。』
「っ…」
「もう1人男子を増やせば良いのよ。そうすれば男手も2倍になるし、男同士互いに見張らせることで効果もあるもの。」
正論だと言葉が詰まった隙をついて、鈴音さんが畳み掛ける。
軽井沢さんが、俄かに困惑する。
「で、でも…平田君以外に信用出来る男子なんて…」
「居るわ、そうでしょう旋毛風さん。」
…………あぁ、そういうこと。
鈴音さんの意味有りげな話のふっかけに、熟考してから賛同する。
あくまで、貴女に言われてから察したと言うように。
『………そうね、鈴音さん。確かに、1人居る。貴方の出番よ、清隆。』
後ろを振り返る。
1人所在無さげに立ち竦む清隆に、全生徒の視線が向いた。
おいおい、とでも言いたげな清隆の瞳を見つめ返す。
ここらで1つ、クラスに恩を売りに行こうじゃない？
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作者名：桜 | 作成日時：2024年4月14日 19時
