空の街

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「…………ふられた。」


居酒屋で突っ伏せば
今日一日何の仕事をしたのかさえ思い出せなかった


無言で隣に座る須藤はただビールを飲んでいて
今日しでかした数々のミスを責める事もしない


お腹もすかない
ビールもいらない
何もいらない
何も、何も何も何も何も

ただあの頃に戻りたいなんて
そんなの絶対無理なのに



コトンとビールをテーブルに置く音がして
また世界に苦しいだけの静かな世界がやってくる



「………何か言ってよ」

「……」

「須藤…」

「何て言って欲しいんすか」

「そんなのない。何言われたって何も変わんないもん」


なんてわがままな事を言ってるんだろうと思うのに
もうどうしようもできなくて


「……Aさんは素敵ですよ」

「何それ」

「振られてもそれは変わんないって事です」

「全然嬉しくない」

「でしょうね」

「でしょうねって何よ」


顔を上げて睨めば枝豆を頬張る顔と合った


「今俺に何言われたって何の慰めにもなんないでしょ」

「なんないよなんないけど慰めて」

「わがまま〜」

「いいじゃん今死ぬほど悲しいんだから！！」

「じゃあその悲しいの全部話して」

「……話しても変わんない」

「いーから。」



思い出したくないのに思い出せばすぐに涙が滲みそうで


「…好きだった。ずっと。めちゃくちゃ。最初から最後まで全部。…本当に好きだったの…もう叶わないけど」


自分で首を絞めれば胸がぎゅうぎゅういって
痛くて苦しくて息がもう


「時間が解決するのかもしれないけどじゃあ時間経たない今はどうしたらいいの。忘れたくても忘れられないしいっそ好きにならなければ良かったなんて思いたくないけど思っちゃうし、最低で、最悪で……こんな自分もうやだ…」


楽しかった時間さえも苦しくなりそうで、そんな事思いたくないのにこんな思いするならいっそ消えてなくなりたい


「やだ、もうやだ、過去も未来も全部やだ」

「うん」

「しんどい…辛い……」

「うん」

「……どうしたらいいと思う」

「ビール飲んだらいいと思う」

「飲みたくない！」

「飲みたくなくても飲んで下さい」

「何でよ！」

「飲んだら楽になるかもよ？」

「……」

「ほら」


グラスを渡されて一気に飲み干せば、カラカラの喉を
通って胃に入ったのに、そのまま全部目から溢れた


体が熱くて、目も熱くて、どうしようもなくて涙でぐちゃぐちゃな袖がどんどん滲んで色が変わっていくのが見えた

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